下痢の原因となる主な病気
感染性腸炎
急性下痢で最も多い原因です。ウイルス、細菌、寄生虫などへの感染によって起こり、突然の下痢に加えて腹痛、発熱、吐き気、嘔吐を伴うことがあります。細菌性腸炎では血便を認めることも少なくありません。
原因によって治療法は異なり、抗菌薬が必要な場合もあれば、かえって使用しない方がよい感染症もあります。当院では症状や経過、食事歴、海外渡航歴、周囲の流行状況などを詳しく確認し、必要に応じて便培養検査などを行い適切に診断します。
過敏性腸症候群(IBS)
大腸カメラや血液検査で明らかな異常がないにもかかわらず、腹痛や腹部不快感とともに下痢や便秘を繰り返す病気です。日本人のおよそ10〜15%が経験するとされ、消化器内科で最もよく診療する疾患の一つです。
腸の運動異常や内臓知覚過敏、自律神経の乱れ、ストレス、腸内細菌叢(腸内フローラ)の変化などが複雑に関与すると考えられています。適切な診断と生活指導、薬物療法によって症状の改善が期待できます。
潰瘍性大腸炎・クローン病
慢性的な腸の炎症によって下痢や腹痛を繰り返す炎症性腸疾患(Inflammatory Bowel Disease:IBD)です。潰瘍性大腸炎では粘血便や頻回の下痢が特徴で、クローン病では口から肛門まで消化管全体に炎症を起こし、腹痛、下痢、体重減少、肛門病変などを認めます。若年者に多い疾患ですが、中高年で発症することも珍しくありません。近年は有効な治療薬が増えており、早期診断・早期治療が長期予後を大きく左右します。
虚血性大腸炎
大腸の血流が一時的に低下することで発症し、突然の腹痛に続いて血便や下痢を認めます。便秘後や高齢者、高血圧・糖尿病・動脈硬化をお持ちの方に多くみられます。多くは保存的治療で改善しますが、重症例では入院加療が必要となるため、早期診断が重要です。
大腸がん・大腸ポリープ
慢性的な下痢や便通異常が続く場合、大腸がんが原因となっていることがあります。特に便秘と下痢を繰り返す、血便を伴う、体重減少や貧血がある場合には注意が必要です。早期大腸がんは自覚症状に乏しいため、症状が軽くても大腸カメラによる確認が重要です。前がん病変である大腸ポリープを切除することで、大腸がんを予防できることも大きな特徴です。
薬剤性下痢・その他の病気
抗菌薬、胃酸分泌抑制薬、糖尿病治療薬、便秘治療薬などは下痢の原因となることがあります。また、胆汁酸吸収不良、顕微鏡的大腸炎、慢性膵炎による膵外分泌機能低下症、甲状腺機能亢進症など、消化管以外の病気が背景に存在することもあります。当院では問診を重視し、服用薬や生活習慣、既往歴まで詳しく確認しながら原因を総合的に評価します。