2026年10月18日

お酒に強い人は肝臓も強い?アルコールと肝機能|西宮市の肝臓専門医
「お酒に強い人は、肝臓も丈夫?」
「お酒を飲んでも顔が赤くならない」「結構飲んでも全然酔わない」
皆さんの周りにも、そんな「お酒に強い人」はいませんか?
反対に、ビールを少し飲んだだけで顔が真っ赤になったり、動悸がしたり、気分が悪くなったりする方もおられます。
実は、私自身もお酒を飲むとすぐに顔が赤くなったり動悸がする体質で、あまりたくさん飲むことができません。肝臓専門医ではありますが、お酒に関しては弱いです。
では、お酒に強い人は、肝臓も丈夫なのでしょうか?
実は、お酒に強いことと、肝臓がアルコールに強いことは、必ずしも同じではありません。
また、以前は「お酒は適量なら健康によい」と言われていましたが、最近では、その考え方も少しずつ変わってきています。
今回は、肝臓専門医の立場から、お酒の強さと肝臓の関係、そして健康を守るためのお酒との付き合い方についてお話しします。
「お酒に強い・弱い」は何で決まる?
私たちが飲んだアルコールは、主に肝臓で分解されます。まず「アセトアルデヒド」という有害な物質に変わり、その後、「ALDH2(アルデヒド脱水素酵素2)」という酵素の働きによって、酢酸へと分解されます。
このALDH2の働きには、生まれつきの個人差があり、遺伝子の組み合わせによって、大きく3つのタイプに分けられます。
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活性型ホモ接合体(約55%):ALDH2がよく働き、比較的お酒に強いタイプ。
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ヘテロ接合体(約40%):ALDH2の働きが弱く、少量のお酒でも顔が赤くなりやすいタイプ。
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不活性型ホモ接合体(約5%):ALDH2がほとんど働かず、ほとんどお酒が飲めないタイプ。
「ホモ」は同じタイプの遺伝子を2つ持つこと、「ヘテロ」は異なるタイプの遺伝子を1つずつ持つことを意味します。
日本人では約4割の方がヘテロ接合体とされており、欧米の方と比べても、お酒を飲むと顔が赤くなりやすい人が多いことが知られています。
私自身もお酒を飲むとすぐに顔が赤くなるため、おそらくALDH2の働きが弱いタイプなのだと思います。
ただし、お酒の強さはALDH2だけで決まるわけではなく、アルコールに対する脳の反応なども関係しています。
つまり、お酒に強いことと、肝臓がアルコールによるダメージを受けにくいことは、別の話なのです。

お酒に弱いのに、お酒が好きな人がいるのはなぜ?
ところで、お酒を飲むとすぐに顔が赤くなったり、あまりたくさん飲めなかったりするのに、「お酒は好き」という方もおられます。
これは少し不思議に思えるかもしれませんが、私のまわりにもそのような方はおられます。
実は、お酒に強いかどうかと、お酒を好きかどうかは、別の話なのです。
お酒に強い・弱いという体質には、先ほど説明したアルコールを分解する酵素の働きが大きく関係しています。
一方、お酒を「おいしい」「楽しい」と感じることには、味や香りの好みだけでなく、アルコールが脳に与える作用も関係しています。
アルコールには、脳の働きに影響を与え、気分を高揚させたり、緊張を和らげたりする作用があります。また、脳の報酬系と呼ばれる仕組みにも関わっており、お酒を飲むことを心地よいと感じる場合があります。
さらに、お酒そのものの味が好きだったり、食事との組み合わせを楽しんだり、友人や家族と過ごす時間が好きだったりと、その理由は人によってさまざまです。
そのため、お酒に弱い体質であっても、お酒が好きということは十分にあり得るのです。
ただし、ここで少し知っておいていただきたいことがあります。
お酒を飲むと顔が赤くなる体質の方は、有害なアセトアルデヒドが体内に蓄積しやすく、飲酒を続けることで、特に食道がんなどのリスクが高くなることが知られています。
また、お酒は飲み続けるうちに酔いを感じにくくなることがありますが、これは必ずしもアルコールの分解能力が高くなったことを意味しません。
「以前より飲めるようになったから、体が強くなった」というわけではないのです。
お酒を楽しむ気持ちも大切にしながら、ご自身の体質を知り、体に負担の少ない付き合い方を考えていただければと思います。
お酒に強い人ほど、飲み過ぎに注意?
お酒を飲んでもあまり酔わず、翌日も平気という方は、ついつい飲む量が増えてしまうことがあります。
しかし、本人が酔いを感じていなくても、飲んだアルコールは肝臓で処理されています。
肝臓はアルコールを分解する重要な臓器ですが、長期間にわたって多量の飲酒を続けると、肝臓に脂肪が蓄積し、炎症や線維化が起こることがあります。
最初は「脂肪肝」であっても、飲酒を続けることでアルコール関連肝炎や肝硬変へ進行し、肝がんのリスクが高まることもあります。
特に注意したいのは、こうした変化が、必ずしも自覚症状を伴わないことです。
お酒を飲んでも平気だからといって、肝臓も平気とは限りません。
「酔わないから大丈夫」ではなく、「どのくらいのアルコールを飲んでいるか」が大切なのです。
「お酒は少し飲む方が健康によい」は本当? Jカーブの話
以前は、「お酒はまったく飲まないよりも、少し飲む方が健康によい」と言われることがありました。
これは、飲酒量と死亡リスクなどの関係が、アルファベットの「J」のような曲線を描くという「Jカーブ」の考え方に基づいています。
かつての研究では、お酒をまったく飲まない人よりも、少量飲む人の方が死亡リスクが低く、飲酒量が増えるとリスクが高くなるという結果が報告されていました。
しかし、近年、このJカーブの考え方に疑問を投げかける研究が増えています。
その理由のひとつが、お酒を飲まない人の中に、病気などを理由に禁酒した人が含まれていたという問題です。こうした研究上の偏りを考慮した大規模な解析では、少量の飲酒によって健康リスクが低下するという明確な証拠は得られていません。
一方で、少量飲酒による健康へのよい影響を示す研究もあり、すべての結論が一致しているわけではありません。ただ、「少量のお酒は健康によい」と積極的に勧められるだけの根拠は乏しいという考え方が広がっています。
また、飲酒量が増えるほど、肝臓の病気や一部のがんなどのリスクが高まることは、さまざまな研究から示されています。
現在の医学的な知見を踏まえると、「健康のために、あえてお酒を飲む必要はない」と考えるのが適切でしょう。

毎日の晩酌、どのくらいから飲み過ぎ?
では、どのくらいの量を飲むと、健康への影響が心配になるのでしょうか。
厚生労働省が2024年に公表した「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」では、お酒の量を考える際に「純アルコール量」に注目することが勧められています。
純アルコール量は、お酒の量(mL)×アルコール度数(%を小数で表したもの)×0.8で、おおよその値を計算できます。
例えば、純アルコール約20gに相当する量は、次のとおりです。

厚生労働省では、生活習慣病のリスクを高める飲酒量として、1日当たりの純アルコール量が男性40g以上、女性20g以上という指標を示しています。
ただし、これは「この量までなら安全」という意味ではありません。病気の種類によっては、より少ない飲酒量でもリスクが高まることがわかっています。
また、女性や高齢者、アルコールの分解能力が弱い体質の方などでは、同じ量でも健康への影響が大きくなる場合があります。
最近はアルコール度数の高い缶チューハイなども販売されています。例えば、アルコール度数9%の500mL缶には、純アルコールが36g含まれています。
何気なく飲んでいる1缶でも、思った以上に多くのアルコールを摂取していることがあるのです。
「休肝日」をつくれば、たくさん飲んでも大丈夫?
「週に2日は休肝日をつくっているから、ほかの日は少し多めに飲んでも大丈夫」
そんなふうに考えている方もおられるかもしれません。
もちろん、お酒を飲まない日を設けることは、飲酒量を減らし、飲酒習慣を見直すうえで大切です。
しかし、休肝日を設けていても、ほかの日に大量のアルコールを飲んでいれば、健康へのリスクがなくなるわけではありません。
特に、短時間に大量のお酒を飲む「一時多量飲酒」は、急性アルコール中毒や事故などの危険も伴います。
大切なのは、休肝日をつくることだけでなく、普段から飲酒量を意識し、飲み過ぎない習慣を身につけることです。
お酒を飲むときには、あらかじめ量を決めておく、食事と一緒にゆっくり飲む、飲酒の合間に水を飲む、ノンアルコール飲料を取り入れるといった工夫も役立ちます。
肝臓は「沈黙の臓器」。症状がなくても注意が必要です
肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれています。
これは、肝臓に炎症や障害が起こっていても、初期には痛みや自覚症状が現れにくいためです。
実際、健康診断でAST、ALT、γ-GTPなどの数値が高いと指摘されても、体調に問題がないため、そのままにしている方も少なくありません。
しかし、血液検査の異常が軽度であっても、肝臓の線維化が進んでいる場合があります。また、肝硬変に近い状態になっていても、肝機能の数値がそれほど高くないこともあります。
そのため、肝臓の状態を評価するには、血液検査だけでなく、必要に応じて腹部超音波(エコー)検査などを組み合わせることが重要です。
また、肝機能異常の原因はアルコールだけではありません。
肥満や糖尿病などの生活習慣病に関連した脂肪肝(MASLD)、B型・C型肝炎、薬剤による肝障害など、さまざまな病気が隠れていることがあります。
「お酒を飲んでいるから肝機能が高いのだろう」と自己判断せず、原因をきちんと確認することが大切です。
お酒と上手に付き合いながら、肝臓を守るために
お酒は、食事を楽しんだり、人との交流を深めたりする場面で、身近な存在です。
私自身はお酒をたくさん飲める体質ではありませんが、お酒を飲みながらの会食の時間は楽しみのひとつです。
だからこそ、単に「お酒は体に悪いからやめましょう」ということではなく、アルコールが体に与える影響を正しく知り、ご自身の体質や健康状態に合った付き合い方を考えることが大切だと思っています。
肝臓は自覚症状が現れにくい臓器です。健康診断で肝機能異常を指摘されても、特に体調が悪くないため、そのままにしている方も少なくありません。しかし、肝臓の病気は、症状がないうちに原因を調べ、適切に対応することが重要です。
当院では、肝臓専門医・超音波専門医として、これまでの豊富な診療経験を生かし、肝疾患の診療を行っています。
健康診断でAST、ALT、γ-GTPなどの異常を指摘された方には、飲酒習慣や生活習慣、服用中のお薬などを詳しく確認し、血液検査や腹部超音波(エコー)検査を行います。肝臓に脂肪が蓄積していないか、肝臓の形態に変化がないかなどを確認するとともに、血液検査の結果から肝線維化のリスクについても評価します。
また、アルコールによる肝障害だけでなく、脂肪肝(MASLD)、B型・C型肝炎などのウイルス性肝炎、自己免疫性肝炎や原発性胆汁性胆管炎などの免疫が関連する肝炎の診断や治療、経過観察にも対応しています。
飲酒習慣がある方に対しても、最初から一律に禁酒をお願いするのではなく、肝臓の状態や飲酒量、生活背景などを踏まえて、一緒に改善方法を考えていきたいと思っています。もちろん、肝障害の程度によっては禁酒が必要になる場合もありますが、まずはご自身の肝臓の状態を知っていただくことが大切です。
「毎日晩酌をしているけれど、肝臓は大丈夫だろうか」
「健康診断でγ-GTPが高いと言われたけれど、症状がないのでそのままにしている」
「以前から脂肪肝を指摘されているけれど、詳しく調べたことがない」
そのような方は、一度当院にご相談ください。
当院は、JRさくら夙川駅から徒歩約2分、阪急夙川駅や阪神香櫨園駅からもアクセスしやすい場所にあります。西宮市や芦屋市など、近隣にお住まいの方にも、身近な場所で専門的な肝臓診療を受けていただければと思っています。
お酒に強いことと、肝臓が強いことは別の話です。
お酒との付き合い方を考えるきっかけとして、まずはご自身の肝臓の状態にも目を向けてみませんか。
にしじま内科・消化器内視鏡クリニック
院長 西島 規浩
